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死んだミコトが帰ってきたら
「アカリ起きて。」
身体が揺さぶられる感覚で目が覚める。
『まだ寝る…。』
閉めたレースカーテン越しに差し込む朝日に、早朝だと言うことを思い知る。
そんなに早く起きる必要はないのに起こされたことに、少しだけ苛立ちを感じて布団に潜り込む。
何が悲しくて休職期間に早起きしなくちゃならないのか。
私は今、絶望の淵に立って休職中だというのに。
「そろそろ休職期間終わるんだから、起きる練習しておかないと。」
煩いなあ、そもそも誰が原因だと思っているんだよ。
お前に私を起こす資格があるのか、と脳内で唱えたところである重大なことに気が付いた。
『…ミコト?』
バッと身を起こし、ベッドボードにおいてある眼鏡を急いで掛ける。
瞬きを繰り返すと、視界が開けて、寝室の状況をしっかりと見ることが出来た。
『ミコト!?』
目の前にいる、私の身体を揺さぶって起こした犯人の肩を掴む。
私ってこんなに指の筋肉あるんだって、驚くくらいの力で掴むと、男は苦笑いして言った。
「ただいま~…。」
男の名前はミコト、私の夫だ。
3ヵ月前に死んだ、私の愛する夫だ。
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