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聖なる剣を守る村
何度目だろう。この村が敵対する国同士の国境であるため何度も戦火に焼かれる。五年前は両親を失った。三年前は弟を失った。そして今は。
「なんで……争いばっかりするんだろうね……」
僕の腕の中でずっと兄妹のように生きてきたメリアが腹から血を流し息を引き取ろうとしている。メリアの命の灯が消えるのは明らかだった。
「どうしようも……ないんだ……」
「本当に?……私たちは大魔導師ガネルの末裔なのに……? みんなみんな人の役に立つために魔法を鍛錬しているのに……? 本当に?」
「メリア……、傷に響くから……」
「どうせ死ぬし……。言いたいことくらい言わせてよ……。ジュク、私悔しいよ……。ただ搾取されて略奪されて……犬死にしていく……。変えてよ……。ジュクが変えてよ……。ねぇ……」
「僕は……」
僕の答えを聞かずにメリアの頭はカクンと動かなくなった。
「メリア……」
家族みたいな付き合ってきた。将来、メリアは僕の家族になるはず。そんな幻想も描いていた。僕らの村は燃え盛る。何度も何度も焼かれてまた燃え盛る。
「叶えて見せるよ……」
遠い遠い昔の決意。大切な人を失ったあとの決意ほど儚いものはない。僕らは大魔導師の血筋だ。メリア、必ず叶えて見せるから。
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