聖なる剣を守る村

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「あの村が聖剣を守る村なのか?」 「言い伝えでは。祖は大魔導師ガネルだとか」 「ふうん。聖なる剣を抜く勇者が現れるまで雨が降り続けるという伝説は確かなようだな」  山間の小さな村。そこに近づくたびに雨音が強くなる。王の命令で国境付近の視察に来た一行は雨の中、馬の歩を進める。 「ユーグ様、何なら聖剣を抜けるかどうか挑戦してみませんか?」 「興味はないな。大体、勇者が倒すべき魔王は存在しないし、勇者が現れるべき荒んだ時代でもない。言い伝えは言い伝えのまま守るのが最良だよ。下手な戯れは身を滅ぼすだけさ」 「相変わらずの真面目っぷりですな」 「私が真面目なんじゃない。トンクが不真面目なだけだよ」  村の入口につくと、シワだらけの老人が岩に座っており、じろりとユーグに視線を送る。 「貴殿は村の者かい?」 「まぁ。何にもない村ですがゆっくりしていて下さい。平和しか取り柄のない村ですが」 「ほう。大魔導師ガネルの村に何もないとはな」  ユーグは口に手を当てて笑う。 「ただの視察だ。村の平和を脅かす気はないよ。貴殿の名はなんと言う?」 「……ジュクと申します……」 「ジュク殿、では失礼して村を見回ります。この地の争いがなくなって三百年ですが、平和を存続させるためには必要なことなので」 「御意」  ユーグは馬の歩を進めて村の様子を確認する。雨だというのに子供たちは外で遊んでいる。遊ぶ内容は魔法の玉での的あてや小さな魔法陣で妖精を呼び出したりと大魔導師の村の名に恥じない遊び方だ。 「ふうん。魔法が手遊びとはな。もし争いがあるとしたら、ここの村人は優秀な兵士となるだろうな」 「ユーグ様、滅多なことは言わないほうがいいですよ。三百年平和が続いたといっても綻びはどこにもあるんですから」
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