聖なる剣を守る村

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「ああ。知ってる。だが少しばかり聖剣に興味が沸いたな。見ていくか」 「またいきなり、どんな気持ちの変わりようで?」 「君には分からん。教える気もないが。さて、そこの子供、聖剣の場所を教えてくれないか?」  魔法で遊ぶ子供にユーグが声をかけると、子供は村の奥を指差す。 「ありがとう」  ユーグはそのまま差された方角に向かい、木々が生い茂る中、一層雨が強くなる場所で祭壇を見つけた。そこには確かに剣が突き刺さっている。 「ほう。見事だな」 「抜いてみますか?」 「いやいい。もう分かった。帰るぞ」 「分かったって何が?」 「君は知らなくていいことだ。視察は終わりだ」  トンクには何が何やら分からないが、上司であるユーグがいいと言うならば従うしかない。 「さて、トンクは先に帰りなさい。私はちょっと骨休めをしていく。トンクも雨から抜けたなら宿を取って待っていてくれ。すぐに追いつく」 「骨休めって……何をするんですかい?」 「何、子供たちに魔法でも習おうかなとね。トンクは魔法に興味はないだろう?」 「あーあ。またユーグ様の物好きですか。じゃあ先に行かせてもらいます。ここじゃ贅沢できそうもないんで」 「そうしてくれ。そういう正直なとこが君の魅力だよ」 「はいはい」  トンクは馬を走らせて消えていく。それを見送ってからユーグは馬を歩かせて村の入口で馬を下りた。そこには来たときと同じように老人が岩に腰をかけていた。 「おみそれしました」  ユーグは告げてから膝をつく。 「大魔導師ガネルが祖の村。現在の大魔導師はあなた様ですね?」 「はて?」  ジュクは首を傾げる。 「ただ長生きの腐れジジイに変なことを言いなさる」 「ふふ。それならそれでいいです。ただ私はこの村の平和を作り上げているのはあなた様だと思い敬意を伝えたかっただけです。さて私はもう立ち去ります。私がこの村にいれば雨が降り続くのでしょう? いつかあなた様から魔法の手ほどきをしてもらいたいものです」 「はて?」  首を傾げるジュクを見てユーグはにこりと微笑む。 「あなた様の名は覚えておきます。ではごめん」  ユーグは再び馬にまたがりかけていく。颯爽と立ち去っていってからジュクは立ち上がる。 「ジュクじい、大丈夫だった?」  村の子供たちがジュクの側に駆けてくる。 「問題はないよ」  ジュクが空を見上げると雨が上がり晴れ間が見える。 「ただ……あの方は本当の勇者かも知れん」 「え!? ヤバいじゃん! 聖剣が偽物なのバレちゃうじゃん!?」 「それも問題はない。勇者が必要な時代ではないからな」  ジュクは雨上がりの空に浮かぶ虹を眺める。
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