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この村が生き抜く方法として偽物の聖剣の祭壇を作り、勇者がそれを抜いたときこの地の雨は上がると嘘の言い伝えを世に広めた。そして三百年、ジュクは雨を降らせ続けた。
偽物の聖剣と祭壇は岩を削って作った一個の加工品。剣ですらないのだから誰も抜くことはできない。
ジュクが思い付いた村を戦火から守る方法として、勇者の名を使い言い伝えを捏造した。聖剣があるというだけで、この村は戦火を免れた。
幾人もの犠牲を出した上でジュクと村人たちが編み出した防衛策。国境にあって戦火に塗れたが、勇者の名を使い出した途端、どちらの国をこの村を戦場に使わなくなった。人とはどうしても権威に弱いのだ。
ジュクはユーグが走り去った道をいつまでも眺めている。
あなたが三百年前に世に現れてくれたなら僕は何も失わなかったのに……。
今はもうなき少年のときの心が蘇る。
メリア……、君はもう生まれ変わっているんだろうな。僕はもう三百年生きた。平和を続けるためにいつまで生きればいいんだろう?
雨上がりの虹は何も答えずにただそこにある。
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