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現れたふたりの幼子をじっと見つめ、血河は心底不思議そうに言う。
「おじちゃん? それは誰のことだ?」
「ダル、どー考えてもチカのことじゃん。てかお前って実際ジジイなのにジジイ扱いされるの嫌がるのなんなん?」
子どもらの代わりに答える八裂に、男はむっとした表情で続ける。
「おじちゃんからジジイへ加齢させるな。そして俺は確かに長くは生きているが、おじちゃんでもジジイでもない。断じてない」
「……おいおい、年齢弄りNGかよ。不老不死ってそういうの超越してるもんじゃねーのか??」
呆れた口調でヤタが言うと……。
「あー! からすさんがしゃべったー!」
「ほんとだぁ、すごーい!!」
子ども達は両手を伸ばし、はしゃぎながらヤタへと迫っていく。
「カァァァッ!!」
驚いたヤタが亀代の肩から天井へと飛び上がると、ふたりの子は亀代の膝の上で鏡餅みたく重なった。
「お、驚かせんじゃねーぞこのちみっこ共め! ガキは予測不能なことを急にしでかすから嫌いだ!」
「ぎゃははは! ヤタ、鬼びびっててまじウケるし──ぎゃあー!!」
「お前もガキだろ!!」
馬鹿笑いする八裂の頭へ急降下して嘴を突き刺すヤタ。すると子ども達は八裂の元へと今度は駆け寄ろうとするが、亀代が小さな肩へそっと手を置いてそれを制する。
「急に触ろうとしたらヤタさんがびっくりしてしまいます。ですからちゃんとお願いして触りましょうね」
「う〜ん、うん! わかった、おねえちゃん! からすさん、わたしにつばさをさわらせてください!」
「ぼくにもさわらせてください!」
ヤタはぎょっとしたが、子どもたちがぺこりと頭を下げるのを見て渋々折れる。
「……あー、優しく触れよ、」
観念して子どもらの元へと飛んで行くヤタを血河は目で追い、そのまま視線を亀代へと向ける。
「カメヨ、これは?」
「はい、この子達に悪意や敵意はありません。純粋にヤタさんに触れてみたいそうです」
かわいい、かっこいい、そんなことを言い合いながらヤタの翼や頭に触れるふたりは無邪気な子どもそのものだ。
それにしても、だ。
「狐面、天狗面、ひょっとこ面に続いて猿面と犬面か。……この面に何か意味はあるのか?」
そう血河が呟くと、猿面と犬面は手を止めて黒い男の方へ顔を向ける。
「そうだった、ムサシおねえちゃんとリクドーおにいちゃんにたのまれたんだった!」
「そうだ、おじちゃんがおきていたらユウキくんのところへアンナイしてって!」
ふたりは同時に血河へ手招きをする。
「「おじちゃん、ユウキくんのところへつれていってあげるね!」」
こうも早く話し合いのチャンスが巡ってきたことを血河は内心喜ばしく思う。そしてゆっくりと立ち上がり、言うのだ。
「おじちゃんじゃない、お兄ちゃんの間違いだ」
「うっわ、きっつ……あでっ! オレさっきからこんなんばっかじゃん!」
八裂の頭へ拳骨を落としてから血河は歩き出した。
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