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“センジン”、その者は人間に非ず。ヒトのその先にある存在だ。
今より1300年前。遥か太古の昔のこと。
この日ノ本はかつて男の王が治める多くの小国に分かれていた。
より豊かな土地を手に入れる為に国同士は争いを繰り返し、日ノ本全土は血で血を洗う醜い闘争の渦へと巻き込まれていった。
多くの者が傷つき死んでいく中で、一人の女王が現れる。女王の名は日巫女。彼女は強大な力を持つ八人の従者と共にたちまちの間に日ノ本を統一し、人々に安寧をもたらした。
その八人の従者こそが"センジン"であり、彼らは不老不死の戦士として創られた存在である。
女王の部下に海の向こうの西の大陸からやって来た 徐晴という男がいた。男は大陸から持ち込んだ太歳という不老不死の肉塊のような生き物と呪術を用いてセンジンを生み出した。
徐晴の研究では多くの新たな命が生まれたが、センジンとして完成されたのはわずか八体。すなわち、【血河】【残骸】【薄幸】【業病】【殺生】【幽鬼】【悪戯】そして【屍山】。
彼らは不老不死の肉体と呪術によって与えられた異能を駆使して日ノ本の統一に大きく貢献したのだった。
だが人間とは生まれれば老いて必ず死ぬもの、それが摂理。センジンとは摂理に反するものであり、それを創り出すという研究は禁忌でしかない。
禁忌の研究によって生じてしまった負の波動は日ノ本全土を包み込んでいる。そしてその波動の影響で特異な力を持つ人間や動物が生まれるようなってしまった。それが"ヒトアラズ"である。
センジンは不老不死の上に傷の修復が速い。
袈裟斬りにされた血河であったが、その傷はたちどころに塞がっていく。そんな異様過ぎる光景を目にした面の神使達は愕然としつつも臨戦態勢をとる。
「センジン、本当にユウキくん以外にも存在したんだね。……どうする、姉さん。ユウキくんの所へ案内するかい?」
「いいや、それは早計だ。……貴様、ユウキくんに何用だ! まずは我等に用件を話してもらおうか!」
狐面の問いかけに、血河は何でもないように答える。
「俺が人間となる為に心の臓を奪いにきた」
あまりにも淡々と答えるので、一瞬何を言っているのか理解出来ないでいたふたりであったが……。
「心の臓を奪う? この痴れ者が! そんなことをさせるものか!!」
「ちょっ、姉さん! 待って──」
激昂して駆け出す姉を弟が追いかける。血河は太刀を双刀へと変えて構えたが、姉弟の様子が一変する。
「ぐっ! こんな、時に、」
「姉、さん……、」
二人は突如としてその場に崩れ落ちると、ぜいぜいと苦しそうな息をして冷や汗を流す。
「……なんだ、一体」
目の前の出来事を怪訝に思い呟く血河。すると、
「こいつは反動ってやつだよ」
返ってくる答え。そしてその声の主はゆっくりとこちらに向かって来るひょっとこ面であった。
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