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使用済の会議室の後片付けをしていた時、プロジェクトチームの進捗一覧表を目にした。 それを見ると、東京、大阪、福岡、各地域別に受け持つタスクとスケジュールがわかるようになっていた。 本社から一人で入っている柴田が現地スタッフと一緒に任されている領域が多岐に渡っており、しかも重要度が高い。 あんな状況で帰ってきてたなんて、無茶すぎる。 現場や会社での仕事だけでなく、ホテルに帰ってからも睡眠時間を削ってPCに向かって作業をしている柴田の姿を想像した。 余計な負担かけないようにしなくちゃ。 ドライヤーで濡れた髪を乾かしながら、何気なく目の前の鏡に映る自分を見て、気付いた。 鎖骨の下に赤いところがある。 スイッチを切ってドライヤーを置き、Tシャツの襟をひっぱって中を覗き込んだ。 鎖骨の下から胸にかけて、虫に刺されたように5か所くらいの赤い痕がある。 昨夜の記憶がはっきりと、今目の前で見ている映像のようによみがえった。 たしかにいつもよりたくさん、体中にキスをされた。 思い出すだけで脱力してしまって、その場でしゃがみこんだ。 服で隠れるところでよかったけど……。 今まではこんなことしなかったのに。 柴田のはっきりとした意思を感じる。 再び立ち上がる時、鏡の中の自分の顔が赤いのが見えた。 電話が鳴る音が聞こえた。 23時、柴田からの電話だ。
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