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『お風呂でのぼせた?』 美和の顔が赤いのを見て、画面の向こうで柴田が呑気に笑う。 「……なんかいっぱい痕ついてた」 美和が胸の上に手を当て頬をふくらませて、柴田をにらんだ。 『あー、それ? 今気づいた?』 柴田も自分の所業を思い出して少し赤面し、気まずそうに目線を上にはずした。 「見えないところだからよかったけど……」 『ごめん。でも』 柴田は急に真面目な顔をして言う。 『そこは人に見せちゃダメだから』 「見せないよ」 美和は思わず笑った。 「人に見せるわけないでしょ」 『なら、よかった』 「今日仕事、大丈夫だった?」 『問題ないよ。ちゃんと出社時間に間に合ったし』 柴田は親指を立てて見せた。 「無茶するんだから……」 『無茶してないって言ったでしょ』 「でも、今日、プロジェクトのスケジュール見たよ。 柴田くんのカバー範囲ものすごく多いよね。 私は大丈夫だから、私のことで時間使わないで」 『美和さん』 柴田は寂しそうに困った表情を見せた。 『おれが会いたくて、会いに行ったんだよ』 「うん……」 『会えたから、今日は元気に仕事できたよ』 美和は柴田の言葉にこくんとうなずく。 「ちゃんと寝る時間とってね」 『うん』 「じゃあ、今日はこれで切るね。早く寝てね」 『予定通り終われるように進んでるから。 心配しないで待ってて』 柴田は、おやすみ、とにっこり笑って手を振った。
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