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『買い物、何か必要? 食べにいく?』 『うちにあるもので簡単につくれるけど、それで大丈夫?』 『ありがとう』 電車で移動中、柴田とLINEで夕食について会話する。 こうやってどちらかの自宅あるいはどこかの店で夕食を共にすることが増えた。 こんな会話が日常になるとは、想像もしていなかった。 それも、同じ部署の、入社の時から知っている後輩社員と。 最寄り駅で電車を降りて、改札に向かう。 駅からは歩いて5分。 冷蔵庫にあるものを思い出しながらテンポよく足を進める。 ご飯は帰り着く頃に炊き上がるようにセットしてきた。 米麴とダシで下準備した鶏肉、浅漬けのキュウリがあるはず。 野菜は、ブロッコリー、レタス、トマト。 味噌汁の具材は豆腐とわかめでいいかな……。 一人で食べていた時には、こんなふうに冷蔵庫の中身を考えたりしていなかった。 帰宅してから何もないことに気付いて、夕食を抜いていた日もある。 味もそんなに感じていなかった気がする。 同じ料理でも、自分のために作るのと、誰かに食べてもらうために作るのとは、まったく違う。 柴田が「美味しい」と喜ぶ顔を思い出す。 今は、彼と一緒に味わう楽しみと、彼の反応を見る楽しみがある。
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