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部屋の明かりを消してベッドに横たわる。 柴田が泊まりに来た時は落ちないようにくっつきあって眠っていたのが、一人だと手足を自由に伸ばせる。 もともとシングルサイズだから一人で寝る大きさなのだが、一度二人でいることに慣れてしまうと、違和感を感じてしまうものなのだと知った。 いとおしそうに髪に触れる手も、肩を抱き寄せるやさしい腕もない。 頬や唇に触れる感触も、気持ちよさそうに眠る寝息も、ない。 あたり前に感じていたものがないって、こういうこと。 たった3週間でこんなにも喪失感を感じることになるなんて、思っていなかった。 出発前最後の朝の私は、まだ隣に彼がそこにいると思って安心しきって眠っていたのだろうか。 あの日も、今も、何も失っていないはずなのに、大切なものが失われているみたいに感じてしまうのを、どうしたらいいんだろう。 私ってこんなに弱かったんだな。 あと一か月はある。もしかしたら、期間延長だってあるのに。 がんばれるのかな、私。 目を閉じてもなお、なかなか寝付くことができなかった。
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