6.

1/2
前へ
/16ページ
次へ

6.

『今日は何時に帰る?』 柴田からLINEで帰宅時間を問われた。 『どうして?』 『昨日残業で疲れてそうだったから』 『心配してくれるの? 大丈夫だよ。今日はもう仕事終わって、今電車』 『寄り道しないで早く帰ること』 『なにそれ、保護者みたい。笑』 『保護者だよ』 家で一人で過ごす時間が長くなるのが憂鬱で、どこかに寄って食事して帰ろうかなとぼんやり考えていた。 保護者って言ったって、どうせ家にいないくせに。 柴田のメッセージにちょっぴり毒づきながら、改札を出て、自宅と逆方向に足を向けた。 ごはん食べて帰ろうーっと。 「こらこら。寄り道はダメって言ったよ」 急に誰かに目の前に立ち塞がられた。 この声。 「柴田くん!」 柴田が両手を腰に当てて進路指導の教師のようにそこに仁王立ちしていた。 「美和さん、不良になったんですか」 「不良って」 「だって、言うこときかないから」 柴田は不満げに口をとがらせて見せたあと、いつもの元気な笑顔で手に持った白いビニール袋を持ち上げて見せた。 「お弁当買ってきたよ」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加