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箱庭の神様
ガラスの箱に人工芝を敷いた。陶器のミニチュアハウスを入れて、小さな木や花も入れてあげる。
そして最後に指人形を。
なんでそんなことをしたのかわからない。たまたま家にあったガラクタで小さな世界を作りたくなっただけ。
でもどういうわけか、指人形たちに命が宿ってしまった。
「神様、食べ物をお恵みください」
パンの形をしたおもしろ消しゴムをあげた。
「神様、飲み物をください」
ミニチュアのペットボトルをあげた。
「神様、太陽だけではなく月をください」
月の形をした常夜灯を買ってあげた。
そうして住民たちのお世話をしているうちに、あることを要求された。
外は土砂降りだ。でもガラスケースの中は晴れ。この世界に雨なんてないからね。
でも。
「神様、雨を降らせてください」
うさぎ、猫、犬、ハムスターが円を作り、何やら儀式をしている。中心には私がふざけてあげた青いメノウが。
どうしたもんかな。本物の水分じゃダメだ。そんなことしたら水没してしまう。
じゃあ……。
水色の細かいビーズを、しこたま投げ込んだ。ついでに虹色のカチューシャをも飾ってあげた。
するとなんだか湿った匂いがする。雨上がりの、あの爽やかでしっとりとしたあの匂い。
「神様、ありがとうございます」
指人形はメノウの周りを駆け回っている。気がつけば、外の雨も止んでいた。
天気も良くなったし、どこに行こうかな。
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