離婚した元旦那様、恥ずかしいので心の中でだけ私を溺愛するのはやめてください、全て聞こえています。

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☆☆☆ 《相変わらず笑顔が可愛いな、朧は》  湊斗と正式に離婚した小花が屋敷を去り、湊斗の傷も癒えてしばらくの時間が経った。  今日も、湊斗の心の中は朧への愛の言葉に溢れていた。   騒動のあと、朧は、湊斗と自分の両親に、自分が持つ本当の異能を告げた。  辛い思いをさせたと、朧の両親は素直に謝り、湊斗の両親はもう一度、湊斗と朧の結婚を認めた。  ふたりは離れで、新婚生活を始めた。   毎日顔を合わせているのに、湊斗の朧への愛情は、日に日に膨らむばかりだ。 「湊斗さん」 「何だ」  身体を密着させてベッドに横たわりながら、朧は不満を口にした。 「そういうの、きちんと言葉で聞きたいです」 「何の話だ」 「だから、心で思ってること、口に出して言ってほしいんです」 「何の話か、さっぱりわからんな」 《恥ずかしい!  口で言えたら苦労はしない!  察してくれ、朧》  朧はがばっと起き上がると、湊斗を見下ろしながら言った。 「察しません。  恥ずかしくても、言ってください。  わたしだけが恥ずかしさを我慢して想いを伝えるなんて不公平です。  湊斗さんの口から、湊斗さんの声で、わたしをどう思っているか、言ってほしいんです」  そうなのだ。  両想いになったにも関わらず、湊斗は心の声を口にしないどころか、初めて顔を合わせたときと変わらないぶっきらぼうさで無表情を貫いているのだ。  それが朧には気に食わない。  好きだと、愛していると、言葉で伝えてほしい。  じっとりとした目で湊斗を見下ろしていると、気まずそうに視線を反らした湊斗が、繋いだままの手を一際強く握った。 《今はこれで勘弁してくれ。  いつか、直接伝えられるようになるまで、気長に待っていてほしい。  努力はすると、約束するから》  すると、疑わしそうに湊斗を見つめたあと、朧は溜め息をついて言った。 「本当ですね?  約束ですよ?  ずっと覚えてますからね、わたし」  朧の気迫にたじたじになりながらも、湊斗がこくりと頷く。  再びベッドに横になった朧を、湊斗が抱き寄せた。  湊斗の胸に顔を埋め、そのぬくもりに身を委ねながら、朧はくすぐったそうに笑った。  何度思い返しても、最悪な出会いだった。  離婚なんて経験までした。  どん底まで堕ちて、そして手にした。  欲しくて欲しくてたまらなかった言葉をくれる人を。  待ってほしいと言うのなら、いつまでだって待とう。  けれど、そんな思いは口にはしない。  湊斗を甘やかすことになるし、何より朧は、1分1秒だって早く『愛してる』の一言が欲しいのだ。  ああ、幸せだ。  この日々が、一日でも長く続きますように。  そう願いながら、優しさに包まれて朧は眠りの世界に(いざな)われていった。
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