記憶

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小学生の頃はよくここに遊びに来ていたことを真帆は思い出していた。孝司とリビングのソファーに座ってゲームをしたり、どこからか持ってきたホウキで決闘ごっこをし、窓ガラスを割って怒られたことなどを思い返していた。 「さあ、どうぞ 」 温かい紅茶が運ばれてきた。一口飲んで驚いた。 「おばちゃん、まだ好み覚えててくれたの? 」 孝司の母は穏やかに微笑んだ。 孝司の部屋は二階にあった。いつまで経っても下には降りてこなかった。 孝司の母は真帆が持ってきた菓子折を開けながら静かに話した。 「あの子の様子驚いたでしょ……。 もう大丈夫って思ったけど、あの子にとっては、『まだ八ヶ月』だったんだなって…… 」 真帆はハッと息を飲んだ。飾りが無い理由の答えを伝えてきた孝司の顔を思い出した。今まで見た事のない悲しい表情だった。 「何かあったの? 」 孝司の母は上を見ながら口を開いた。 「あの子、おじいちゃん大好きだったの。 八ヶ月前に亡くなってね。 このお菓子はよく祖父が買ってきてくれたの。孝司の好きなアイスも乗せたらもっと美味しくなるからって 」
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