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一仕事終えた息子は今はもうテレビで大音量のゲームに夢中だ。
「……コーヒー、冷めてしまいましたね」
「驚いた。恐ろしいことを言わないでくれ」
「分かってます。勢いだけでバカなことを言いました。忘れて下さい」
「今、このマンションで空き部屋が確保出来るか聞いてる。数日、数週間待ってくれ」
「え? 本当に俺を囲う気ですか?」
そこでようやく吉野が顔を上げた。久しぶりに目が合って、ホッとした。
「囲うんじゃない。まあ、君が来たとして、玲が寝てから深夜までが一番仕事に集中出来ることが問題で」
腕を組んで考えていると、その腕に吉野が手を伸ばしてきた。その綺麗な指先が触れるだけでも今は、切ない。
「ここ、少し片付けないといけませんね」
「あ、ああ、ごめん。僕は君がいないと生きていけないんだ」
「分かってます。その代わり、今日は後であなたの時間を下さい。俺の部屋に来て下さい、ここからとても近いから。真夜中でもいいから」
玲に見られないように指を絡めて、笑い合う。
「どうか」
「あなたを独り占めさせて」
落とした相手は、一向に思い通りにならない、愛を伝えるに相応しい最上の恋人になった。
終わり。
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