第一章:純白ウェディングドレス姿で震える

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 第一聖女に振られて失恋の痛手に喘ぐ王子が私を選んだ理由の一つは「私が王子のことを好きではないから」 「君は僕のことが好きではないだろう?だから安心できるんだ」  彼は確かに私にそう囁いた。  祝福の声が溢れんばりだ。大聖堂の鐘が国中に慶事を知らしめるために轟くように鳴り響く。私は頭がクラクラとしてきた。  凛々しい婚礼衣装に身を包んだせいで、いつも以上に美しい王子は、私の腕をしっかりと支えて微笑んだ。私たち2人は国王を始め大勢の臣下や高位貴族たちの間をしずしずと歩いた。  彼は私を優しく見つめた。  大聖堂の外に姿を表した私たちは、地鳴りのするような大観衆の歓声に迎えられた。  最愛の彼と私の『愛のない秘密の契約婚』はこうして華々しく幕を開けた。  ただの2番手聖女に過ぎなかった私と、美しい世継ぎの王子がこんな大それた茶番を繰り広げるはめになったきっかけが起きたのは、ほんの3ヶ月前のことだった。この王子と契約婚をするにあたり、私は命を狙われた。 ◆◆◆  それは、こんなことになるとは誰にも予測がつかなかった3ヶ月前のことだ。
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