ニーズベリー城のフランソワーズ付き侍女 アガサSide

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 突然婚約破棄となられたヴィラ様の時はこのようなことは無かったと思い、私どもは顔を見合わせて喜んだ。  お二人の熱烈なご様子からすると、この国の未来は明るいと思える。先の王の時代はお世継ぎがなかなか生まれず、混乱を極めた暗い時代があったと商人の父から聞いていたが、次代の治世は明るいのではないだろうか。私のような小娘に何が分かるとも思うが、新しい女主人のフランソワーズ様は何かが違うと思えた。  ――それにしても、お二人のあまりの熱烈さにこちらが赤面してしまうほど……。  そこへ、スティーブン王子への面会を求めてロバート・クリフトン卿がいらしたとの知らせが、私たち侍女に伝えられた。  ――クリフトン卿にはお待ちいただくしかないわ。こんなに熱烈な状況に割って入るなんて誰にもできないわ。  スティーブン王子の色っぽい求愛行動は、今まで一度も見たことがなかったニーズベリー城のおつきのものたちにとって、これは最高の出来事だと思えた。  ――どうか、お二人が無事に結婚式を成功できますように。    私は心から願った。
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