大法官 ロバート・クリフトンSide

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 ニーズベリー城が近づくと、切羽詰まった危機にそぐわない美しい光景が広がっていた。お堀に近づく道なりには薔薇が咲き、お堀の向こうには城と広大な庭園が夕暮れに赤く染まった空の下で優美な姿を見せていた。    ニーズベリー城にはある秘密がある。女王や王に所有された過去から、庭園に秘密通路が隠されていた。秘密裏に城から外に抜け出せる通路を隠しているのは上がり下りしながらつらなぬ美しい展望回廊だ。緑溢れる広大な果樹園が広がる直前に薔薇が咲く東屋があり、そこに秘密通路が隠されているのだ。  ――もしもだ。  ――もしもフランソワーズ嬢が囚われて投獄されるような法的根拠を大法官が作り出したならば……。    大法官であるジットウィンド枢機卿には、常に疑念がつきまとう。  それは私たち学友3人の間ではもはや暗黙の了解だった。彼は先の王の世継ぎ問題で、王妃を冤罪で処刑した手腕を認められて引き立てられた経緯がある。王族を嘘の偽証によって法によって裁くことを始めたのは、法律家であるジットウィンド枢機卿が最初だ。先の王の時代には、彼以外のまともな法律家はこぞって処刑台に送られた。
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