大法官 ロバート・クリフトンSide

7/8
前へ
/207ページ
次へ
 王妃ですら冤罪で幽閉して処刑台に送り込んだ輩だ。油断はできまい。フランソワーズはここにはいないとした方が、事を運びやすいだろう。  部屋にそっと引っ込んだスティーブン王子は、すぐにフランソワーズ嬢を連れて部屋の外に出てきた。 「昨日からここにはフランソワーズはいない。いいな?」  アガサという名の侍女と武装した護衛兵にスティーブン王子は告げた。 「かしこまりました」 「かしこまりました」  侍女と護衛兵はしっかりとした面持ちでうなずいた。指示はすぐに周囲に共有されるであろう。 「では、逃げよう」    王子はそう言ってフランソワーズ嬢の手を握った。 「レンハーン法曹院で会おう。一人、腕の良い法廷弁護士を知っている」 「分かった」 「気をつけて」  私たちは短い会話を交わして、私とテリーは大法官を初めてとする歓迎されざる訪問客に備えるために素早く踵を返して、客間に戻った。  王子はフランソワーズ嬢の手を引いて走り始めた。窓の外に一気に飛び出したのが見えた。二人は今までも協力して、聖女と王子として様々な困り事に対処するためにアクションを繰り返している。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

390人が本棚に入れています
本棚に追加