パンと聖女の手当

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 少し荒い息になって慌てて家に駆け込んだ私は地味で冴えない聖女だが、聖女として国から認めてもらって、国から手当をしっかりともらっている。  働き者で通っていて、悩み事を解決してあげた貴族からの報酬として、細々とだが臨時収入もあった。 「母さん、すぐにご飯にするわね」  私は手を洗うと大麦粥を素早く作った。火を起こすのもスキルを使った。薪が勿体無いし、私は王立修道院の中に併設された聖女養成所で特訓して身につけたスキルを日常生活で存分に使っている。一種の節約法だ。  かまどから煙が出て、鍋の中の大麦粥が美味しそうに出来上がったとき、小さな家の扉が叩かれた。  ドンドン!ドンドン! 「いるんだろ?俺だ。集金だ」  フェリックス・ブルックはアッシュブロンドの髪を後ろに一つにまとめて縛っていて、常に不機嫌そうな印象を与える青い目をした借金取立屋だ。  聖女になる前、母が困った時に彼がお金を貸してくれた。彼しかお金を貸してくれなかったのは事実だ。しかし、圧倒的に法外な利子をブルックは要求している。 「はい!」  私は彼の機嫌を損ねるわけにはいかなかった。慌てて小さな玄関の扉を開けた。 「おはようございます。今月の分です」  私は皮袋から銀貨3枚を取り出してブルックに渡した。
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