失って フランソワーズSide

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 レンハーン法曹院は私も知っている。かつての父の職場でもあったから。  うとうととしていたところを王子に起こされて事態を悟った私は、すぐに服を着た。昨晩は家に放火された。今日は嘘の罪を着せらて、処刑台に送られる瀬戸際のようだ。  ゾフィー令嬢の放った言葉が耳に蘇る。 『あなたが王子に何かした場合、あなたが死ぬか私が死ぬかよ。許さないから』  ゾフィー令嬢は『あなたが死ぬか私が死ぬか』という言葉通りに実行したということになる。私はゾフィー令嬢の本気さを悟って、震えた。  ――彼女が本当に死んでしまったらどうしよう?  ブロンドの髪が美しくカールしていて、天使のような愛らしい青い瞳を持つ18歳の令嬢の姿が頭に浮かんだ。唇は小さく、全てにおいて小さく愛らしくまとまっていて、有名画家に描かせた彼女の絵は大評判になり、実物も素晴らしく美しかったあの令嬢が、命に代えて私を告発した。無事では済まされないだろう。  ――お願いっ!まだ早まった事をしないでいて。  私は心の中で必死に祈った。スキルを発動してなんとか彼女の命が消えていない事を確認しようとしたが、うまくいかなかった。
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