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ロバート・クリフトン卿は本気で私の心配をしていた。テリー・ウィルソン卿は少し疑ってはいるものの助けざるを得ないというスタンスだろうか。
秘密の抜け道からニーズベリー城を脱出すると決まった。
私はスティーブン王子に手を取られて、そのまま逃走した。大好きな人に手を取られて「逃げよう」と言われるのは、切羽詰まっている状態なのに、どこかときめいてしまう。
私はバカだ。逃避行が、物語のようにロマンチックな訳がない。
自分が囚人として牢に入れられて、濡れ衣で死を迎えるかもしれないのに。
ジットウィンド枢機卿は目的のためなら、法律用語で固めて私を罪人に仕立て上げられるだろう。ブルク家の治安判事もそうだろう。
私は初めて知った王家の秘密通路を駆けながら、時折私を心配そうに振り返りながら、私の手を握って走るスティーブン王子の瞳に心を打ち抜かれた。
愛してもいない私のために、こんなことをしてくれる人はそうそういないと思う。ロバート・クリフトン卿とテリー・ウィルソン卿にも感謝しかない。罠に嵌められる運命の私のために、彼らはなんとかしようとしてくれていた。
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