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門番は私の様子をチラッと見たが、特に何も言わなかった。私が誰だか分からないだろう。
市街の道は混んでいた。屋台も立ち並び、人々の往来が多く、火縄銃を持った兵が集団で歩いていたりもした。馬や馬車の往来も多い。王子は一目につかないように俯きながら歩き、私の手をずっと握って先導してくれた。
敵に追われる状態で、恋する人に手を引かれてリードされるというのは、なんとときめくのだろうか。
私の心はハラハラドキドキの緊張と、心のときめきでどうにかなってしまいそうだった。
レンハーン法曹院に着くと、王子は目的の部屋があるのか、迷うことなく真っ直ぐに歩いて進んだ。突然、壁際に押し付けられて、王子がそこに身を重ねてきて私はドキッとした。
「しーっ、大法官であるジットウィンド枢機卿の部下がいる」
王子は壁際に私に覆い被さるようにして、私は至近距離に王子の唇と首筋があるので、心拍数が急激に上がり、心臓の音が王子に聞こえてしまわないかと焦った。
「よし、行った。目的の部屋の前まで来たら、一気に部屋の中に入って身を隠すから」
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