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皆が旧知の仲らしく、懐かしそうに会話をしていた。またも王子の口から「僕の最愛の人」と言うフレーズが出て、私はこそばゆいような、胸が震えるような思いだった。たとえ、皆の前での建前としての嘘の表現なのだとしても、私はあり得なかったスティーブン王子の言葉に恋心が揺れた。
その時だ。
突然、探していたゾフィー令嬢の生の力を私はキャッチした。
「あぁっ、ゾフィー令嬢がこの近くにいます」
私はそう叫ぶと、ハンレーン法曹院を飛び出してしまった。ゾフィー令嬢が生きているならば、ブルク家に戻ってもらう必要がある。
私はとにかくゾフィー令嬢を探し出したい一心で外の群衆の中に飛び出してしまった。すぐ近くにゾフィー令嬢を感じる。
私は雑踏の中で立ち止まって、耳をすまして集中した。私のそれほど強くないスキルでも、微かにゾフィー令嬢がこの近くにいる事を感じるのだ。
――あぁ、私に第一聖女のヴィラのようにスキルと美貌があれば……。
私が自分の事を情けなく思ったその時だ。
「黙れ、さっさと歩け。さもなければ命はないぞ」
と言う声を聞いてゆっくりと目を開けた。
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