失って フランソワーズSide

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 目の前にゾフィー令嬢がいて、一目で悪どい荒くれ男だと分かる太った男に短刀を突きつけられていた。太った男は誰かの悪の手下だろうか。 「ごめんな「あーら、今日も暑いわぁ」」  ゾフィー令嬢が微かな声で荒くれ男に謝ろうとしたその時、私はすぐそばでスキルを発動した。  この雑踏の中で誰にも被害を与えずに荒技を使いこなすのは、勇気がいる。だから、自分にだけ効くスキルを発動した。 「おいっ!そこのお前!金髪の女!」  ――引っかかった! 「何んですか?無礼な態度を取るなら、お父様に頼むわよ」  ゾフィー令嬢らしい言い回しで、私は叫ぶように大きな声を出したのだ。  私は擬態のスキルを発動して、ゾフィー令嬢にそっくりな姿になっていた。  荒くれ男は一瞬ビクッとした。私はゾフィー令嬢に微かにうなずいて見せた。  ――逃げるのよっ!  ただ、その瞬間、一瞬の隙ができた。私は荒くれ男に一気に飛びかかられ、刺された。同時に後ろから長弓で射られたと、と思う。  きゃあっ!  うわっ!  なんだよっ!  人が刺された!
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