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私は夫の第三の執務室と言われる、公にされていない秘密の部屋がある一角を目指した。これは今は知られてなくても、後世ではバレバレの不倫部屋だ。夫に見つかったら激怒されるが、そもそも夫は私の侍女をくどくのにお忙しいはずだ。
スキルが発動できるのか、試しに手の中でスッと炎を出した。ちゃんと炎がゆらめいた。私は安心して、一瞬で消した。
――パンを焼くぐらいはできそうだわ。あとであの女の子にパンを焼いてあげよう。
私はそう思うとウキウキしてきた。刺されて死んだが、ラッキなーことにジットウィンド枢機卿を追い詰められる証拠を手にできそうだ。
第一聖女だったヴィラほどの力はないが、私にもスキルは少しは使える。やってやれないことはない。父も陥れられ、私も嵌められそうになった。
ジットウィンド枢機卿が聖女である私を完全に嵌めるために、ブルク家を裏切ってゾフィー令嬢の殺害を命じていたのだろう。私はゾフィー令嬢に擬態したタイミングで殺されたのだから。
権力に取り憑かれて、法を盾に何でもありとするジットウィンド枢機卿を自由にさせて良いわけがない!
そっと王である夫の部屋に忍び込んだ。すぐ隣に置いてある天蓋つきベッドから獣のような声が聞こえる。夫とその愛人の侍女の声。
はぁっん……ダメっ……イぃぁあっんっ……イっちゃう……
――思いっきりお楽しみ中のようですね。
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