死と希望 フランソワーズSide

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 王妃に100通を超える手紙をよこしたと言われる王は、ターゲットが見つかると手に入れるまでは決して諦めない男だ。  私は後でチャンスがあれば、夫である王に平手打ちをくらわそうと思った。こういう男は女性の敵だからだ。  私はそのままそっと執務机に近寄り、机の上に置かれた手紙一式を集めた。そして、そばに置いてあった空っぽの皮袋に素早く詰め込んだ。  スキルを発動して、机の引き出しの中のありとあらゆる羊皮紙を入れた。これを証拠として隠す場所だが、ニーズベリー城にしよう。少なくとも私はその構造を少なからず知っている。普段は人が滅多に訪れず、訪れるとしても限られた人間しか知らない場所を、私は知っている。そこにスキルで隠そう。  今私がいるのは、おそらく夫である王が大法官から巻き上げた城で、増築と大改修を決行したヴィダー城だ。ここからニーズベリー城までは馬車で行ける。  夫の浮気に激怒した妻を演じて、荷物をまとめてさっさとニーズベリー城に移動しよう。可愛いリジーも連れて、そこでパンを焼いてあげるのだ。  私はこの計画にワクワクした。
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