死と希望 フランソワーズSide

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 窓を開け放って、皮袋の口をしっかりと縛り、窓から外に放り投げた。庭の楡の木のてっぺんに皮袋が引っかかったのを見とどけると、私は天蓋ベッドで身動きを止めた二人に近づいた。 「あら、あなた。お尻丸出しで、あなたの粗末なモノも丸出しですね。いかがなされましたでしょうか。あーら、ジェーン?私の侍女ですのに、私の夫に足を開いているとは、信じがたいほとはしたないことですこと。二人とも覚悟なさいっ!」  私は振り向いた夫を張り倒した。渾身の力で。    ビシッ!  私の手も痛かったので、赤く腫れ上がった夫の頬はもっと痛かっただろう。 「もしかして、ぶたれたのは初めて?この性懲りも無く女性をとっかえひっかえする性悪男。あなたは頭が悪いから、あなたのモノに問題があることに一生気付かないわ」  凍りついたように私を見つめる夫に私はにっこりと優雅に微笑んだ。夫が愛してやまなかったその笑顔を振る舞ったのだ。
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