死と希望 フランソワーズSide

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 私は皮袋から一枚の羊皮紙を取り出して、裏にスキルで文字を書いた。 『法曹院の外でゾフィー令嬢を見かけた時、ゾフィー令嬢を狙う者に剣で襲われて、長弓で射られる。避けるべし』  全ての仕掛けをスキルで封じ込め、私は未来の自分にメッセージが届くことを祈って秘密通路を後にした。  ニーズベリー城の料理室は知っている。王子に解毒するための薬草を煎じる時に使わせてもらったからだ。  私はそこにリジーも連れてきてもらって、パンを作った。発酵にスキルを使っているが、誰も気づいていない。王妃がスキルを使えるなんて、誰も知らないのだから。  できたパンをリジーと一緒に小さく丸めて並べて、パン焼きがまに入れると、私はそこで歌を歌いながらリジーとパンが焼き上がるまで待った。 「これからどんなに辛いことがあっても、最後にあなたは勝つわ。いい?リジー?自分を信じるのよ」  私はリジーにそんな話を小声でしながら、歌を歌っていた。私がそんなことをしなくても、この2歳か3歳の娘は大きな人になるのは事実だ。でも、そう言わざるを得なかった。これからジットウィンド枢機卿と彼女の父親が何をするのか私は知っているのだから。
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