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すぐに焼き上がったパンをリジーは美味しそうに、幸せそうに食べてくれた。
「お母様、何があっても大丈夫だわ」
幼いリジーは私の瞳をのぞき込んでそうささやいた。
「そうね、あなたはすごいわ」
私は思った。
「お母様も、こんなパンを作れてすごいわ。誰にも負けてない」
3歳のリジーはそう言って微笑んでくれた。私は思わず涙がこぼれた。そのまま、目を瞑ってリジーを抱きしめた。小さな体はふわふわで温かった。
「フランソワーズ、うまく交わしたな!さすがだ!」
私の目の前には心配そうにのぞきこむ、褐色の髪のとても美しい人がいた。すぐに赤毛の髪の毛に寝癖がついた若い男性が駆け寄ってきた。サラサラ金髪の若い男性と一緒に、周りの群衆の中から長弓の男と短剣を持っていた荒くれ男を捕まえた。
「私は聖女ですから」
私は小さくつぶやいた。
「そうだ、君は誰にも負けない聖女だ。よくやった」
スティーブン王子は煌めく瞳で私を見つめて、そっと私を抱きしめてくれた。
――愛のない結婚でもいいわ。このお方のそばにまた入れるなら。生きてまた会えて、本当に嬉しい。
私はところ構わず泣いた。スティーブン王子の胸は温かだった。王子の唇が私の唇に重なって、私は思わず応えた。
あぁっんっ
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