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「お前さあ、スキルがあるんだから、もっと色気のある格好とか胸を自分で大きくするとかしないと良いところに嫁に行けな……「お支払いします!」」
私はブルックに最後まで言わせなかった。彼の手にもう1枚の銀貨を握らせた。
――お願いだから、母さんに聞かれる前にもう帰って!
私は必死だった。
「最初から出せ」
私は唇を噛み締めて耐えた。
ブルックは母と私にとっては恩人だ。本当に困った時にお金を貸してくれた。しかし、借りてしまったら地獄を見る相手だった。
「ご……ごめんなさい」
「ったく、事前に利子が値上がることを察しろ。それからお前のパンだな……」
「え?」
「お前のパンはいい。後でもらいにくる。いいな?」
「あ……はい」
「店を出せ。聖女のパンと銘打ってパンの店を出して、他の人にも食わせてやれ」
私が黙っていると、ねめつけるようなブルックの視線が私の体を這った。私はゾッとした。
「お前みたいな地味で冴えない女なんか相手にしないから安心しろ。ただし、パン屋を開くことは検討しろよ。いいな?」
彼は詰まらなそうに私を見て、ぼそっと暴言を吐くと帰って行った。パン屋を開いて、さらに私の収入を増やして利子と称してお金を巻き上げる計画なのだろうか。
――ただ、今月もなんとか払えたわ。
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