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でも、人と比べて汲々として人生を生きるのはもったいない。もっと、私にしかできないことがあるかもしれないし、なかったしても私には人を幸せにすることができたりするかもしれない。もっとささやかなものでだ。
ゾフィー令嬢に嘘をつく必要はない。この人には正直に話して、この人の疑いの気持ちを少しでも晴らしてあげよう。
私はそう決めた。ゾフィー令嬢の腕を取り、フェリックス・ブルックの方に歩み寄った。すると、ゾフィー令嬢が驚いたことに、ブルックのことを知っている人であるかのように凝視して、話しかけたのだ。
「ブルック?」
「そうです、ゾフィー令嬢。覚えていましたか?」
「覚えているわ。私が幼い頃、何度か屋敷に来てくれていたわ。一時期、父の仕事を手伝ってくれていた時期があったでしょう?」
「はい」
フェリックス・ブルックが治安書記をやめたのは父と同じ頃だとスティーブン王子は言っていた。ゾフィー令嬢の父親である、ブルク家当主ジャイルズと一緒に仕事をしていた時期にゾフィー令嬢と知り合いだったらしい。
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