法廷弁護士 ダニエル・ポーSide

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 私はダニエル・ポーだ。この時代に女性の体で生を受けたことを悔やむ。星の数ほど男が生まれるのに、あろうことか私は女で生を受けてしまった。  女王はいるが、女性の法律家は存在しない。聖女はいるが、女性の法律家は存在しない。  だが、見た目が男であればいいだけの世の中だ。本名はキャサリン・ポーだ。ダニエルというのは、亡くなった兄の名を語っている。裕福な商人の家に生まれたために、大学に進むことはできた。胸が膨らむのがイヤで、太らないように気をつけているが、元々痩せ体質のようで、これまでは他人に女性だと悟られたことはない。  市街から離れたところに家を構えている。実際には、従兄弟が営む農場に住んでいる。両親以外に私がキャサリンだと知っている唯一の人間が、従兄弟だ。互いにこの秘密は墓場まで持っていく約束だ。   毎朝早くに馬に乗って法曹院まで出勤している。私はこの生活が気に入っている。お金にはなかなかならないかもしれない。でも、小さな案件は始終飛び込んできた。判例を探して何時間も資料室に籠る時間が大好きだ。紙の山に囲まれた職場も好きだ。
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