法廷弁護士 ダニエル・ポーSide

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 スティーブン王子や他の貴族の子息とは大学で知り合った。彼らもまた私を男性だと思い込んでいる。スティーブン王子に憧れたのは昔のことだ。私は法律に打ち込むことで、スティーブン王子への気持ちを捩じ伏せた。  生涯独身で生きるつもりの私は、男性の法律家として、この世の生を終えることができれば本望だ。  今朝、農場からレンハーン法曹院に続く小道を馬に乗ってやってくる途中で、幸せそうな花嫁が馬車に乗り込むのを見た。  黒い法服に黒い帽子を身につけている私は、家を出る時は自分の服装を見てなんとも思わなかったのに、幸せそうな花嫁を見ると少し胸がざわついた。  腰に短剣と筆記用具を携えている私は、今花嫁が持っているようなブーケは一生手にしないだろう。  いつものように依頼人のために紙の山と格闘して、そろそろ法廷に出るために銀髪のカツラをつけようかとしていると、思わぬ来客があった。早めに中央刑事裁判所に馬で向かおうと思っていたが、そんなものを吹き飛ばしてしまうほど懐かしい来客だった。
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