法廷弁護士 ダニエル・ポーSide

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 頭の中にタルガースクエア方面からメリーポーリ大聖堂へ向かうミルゲート通りを思い浮かべた。混んではいないだろう。そこからさらに北に向かうベイカー通り沿いに立つ中央刑事裁判書への道を思い浮かべた。あの道も今日のこの時間ならば特段混んではいないだろう。  ――大丈夫だ、早めに向かうことを諦めよう。 「ダニエル、久しぶりだ」 「これは王子!お久しぶりです。そちらは例のフィアンセですか?」  私の心拍数は跳ね上がった。だが、彼は結婚を発表したはずだ。昨日、帰宅の際に新聞の最新報を小銭を払って買って知った。指がインクで汚れたが、少し涙でも滲んだ気がした。私はその新聞を筆記用具入れにくしゃくしゃにして入れたままだったのを、今朝気づいて取り出した。それが、まだ机の上に放置していた状況だった。王子に気づかれないように慌てて暖炉の方に放り投げた。  ――そうか、今朝幸せな花嫁を見て胸がざわめいたのは、彼の結婚発表が影響していたのか。  私はスティーブン王子の隣にいる薔薇色の頬をして、エメラルドの瞳が美しい女性に気づいた。彼女は確か第一聖女ヴィラ嬢に変わって、新しくスティーブン王子の花嫁になる第二聖女だ。
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