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「こちらはフランソワーズ。私の最愛の人で、三ヶ月後には妻になる」
「それはそれは初めまして。このような所まで来ていただきまして、お礼申し上げます」
私は挨拶をしながら、心臓がトクンとした。
しかし、スティーブン王子の依頼内容を聞いて私はすっかり彼女に入れ込んでしまった。
――家が放火されたの?さらに媚薬を使ってスティーブン王子をたらし込んだと訴えられたの?しかも、ジットウィンド枢機卿に罠に嵌められそうだといっている?
ジェノ侯爵家のエリーゼ令嬢に会いに行く必要がある。証言を取るために少々手荒い真似も必要かもしれないが、私は武術を嗜むので平気だ。
――我がスティーブン王子に薬を盛って我が物にしようとするなど、言語同断だわ!
ブルク家の治安判事は私の大っ嫌いな輩だ。あの太った男を思い浮かべて私は身震いした。それに、ジットウィンド枢機卿だ。彼に睨まれたら、立身出世はまず無理だ。しかし、これは千載一遇のチャンスとも言えるのではないだろうか。枢機卿のやり方には、法律家界隈では眉を顰める者も多い。だが、権力者に気に入られ、自分の敵と思われる者を悉く法律的に処分を正当化していく手腕に恐れをなす者も同じぐらい多い。
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