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「しかし……」
躊躇う目の前の男を私はじっと見つめた。
「実際なんてどうにでもなるんですよ。要は証拠を揃えればいい。証拠は作れる」
私は自分の乾いた若い声を信じられない思いで聞いた。黒い法服のポケットから私は手紙を取り出した。それを広げてみせた。
処刑された王妃の浮気相手とされた男の印章が押された白紙の紙だ。そこにスラスラと私は体の関係をはっきりと匂わせる文面を書き連ねた。
はっきりと王妃の名前を書いた。私の手が信じられない勢いで動くのを見た。
私の目の前の男がワナワナと相手が震えるのを見た。
「あんたっ!それは……」
「姦通罪は処刑だな」
私の口からはっきりと乾いた声が言うの聞いた。目の前の男が震えて後退り、逃げるように出て行った。
「誰かに言ったところでお前の命はないぞ」
私はその姿を追いかけるように言葉を投げつけた。
私はしばらく放心していた。
間違いない。私は確信した。私は若かりし頃のジットウィンド卿にのりうつったということか!?
さっき私は死んだと思う。そしたら王妃を虚偽の手紙で姦通罪にしたというウワサの現場に遭遇した。今、私が乗り移っているのは、どう考えでも若かりし頃のジットウィンドだ。
私は渾身の力を振り絞って、自分が乗り移った男の体をコントロールしようとした。
「な……なんだ!」
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