霧が晴れる ゾフィーSide ※

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 だって、私が媚薬が欲しいと泣いてすがった相手が、フランソワーズなのだから。  男女の営みというものを王子としたい。王子を私の婚約者にしたい。王子に愛されたい。薬を使ってでも。  その切なる私の思いをフランソワーズだけは知っている!  私が昨日『媚薬』というヒントを自らフランソワーズにあげたのだ。彼女は私には断って、自分で『媚薬』を作って王子に飲ませたに違いない。そして、王子と既成事実を作ったに違いない。  私はそう思うと生きていたくなかった。私が生きていられる世界は、フランソワーズが死んだ世界だ。私が死ぬか、フランソワーズが死ぬか。その二択でしか世界は成立しない。私には。  今朝、朝早くにハンルソン・コート宮殿と呼ばれる実家を飛び出したあと、私は別荘に隠れていようと思った。でも、すぐに思い直した。父に発見されてしまうと。確実にフランソワーズのやったことを明るみに晒して罰を与えるには、私が死んだ方がいい。つまり、私が見つからない方がいい。  ――死ぬ?  ――そんなことで?
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