辺境伯ブルク家ご令嬢

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「いい感じだわ」  私は満足して額の汗を拭った。  キッチンの窓から空が見える。空はとても晴れていて、開け放った窓から新鮮な空気が部屋に入ってくる。手縫いのカーテンから気持ちの良い風が吹き込んできた。  ここからは発酵にスキルを使う。少しだけ発酵タイムを置けばすぐにパンチ、分割、丸めができるだろう。時短術だ。  その間に私はそっと母の様子を見にいった。母は寝室のベッドでぐっすり眠っているようだ。  自分のための小さな部屋に入り、身支度を整えた。第一聖女は私のことを『褐色の肌に薔薇色の頬』と褒めてくれた。地味で冴えない私でも、笑顔になるとエクボができる。せめて自分が心地よければ、美醜を超えて他人を心地よくさせることができると私は信じている。  そうでもしないと、大好きな人の隣に平気なふりをして立っていることはできない。
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