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私は法廷にいた。ケエストリンスター・ホールの法廷だ。豪華な装飾を誇り、厳かなこの法廷で私はローブとウィッグを身につけるコート・ドレスを守っていた。
訴えを起こしたのはブルク家当主ジャイルズだ。訴えられたのは、ジットウィンド枢機卿だ。傍聴席に居並ぶのは錚々たる貴族の面々だ。有力者が続々と傍聴席を埋めている。辺境伯として巨大な力を持つブルク家当主が、ジットウィンド枢機卿を告発したとあって新聞を連日賑わしていた。今朝、農場から馬でケエストリンスター・ホールに向かう途中、飛ぶように売れている新報を私は買った。一面にこの事件のことが取り上げられていて、今日裁判が行われるとなっていた。
すでに陪審員席も恰幅の良い有力者で埋まっている。ジットウィンド枢機卿はなんと自身で弁護すると言っており、被告代理人はいない。つまり、この場に現役の法廷弁護人は私一人だ。私はジャイルズの原告代理人を務める。
裁判官は罪状を読み上げた。とっかかりは土地法の違反だ。
「私は無罪です」とジットウィンド枢機卿は答えた。ここまでは想定通りだ。
私は深呼吸した。裁判長が証人を呼んだ。
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