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「これから長い時間をかけて君の愛を獲得するつもりだから、覚悟しておいてくれる?」
褐色の髪が濡れていて、その奥で煌めく彼の瞳に私は射抜かれたようだった。心臓のドキドキが止まらない。彼の頬は赤く染め上がっている。
「……愛しているの……」
私は声を振り絞って言った。涙が込み上げてきた。体が震える。すると彼がぎゅっと抱きしめてくれた。
「ずっと。ずっとあなたのことを愛していました。でも、あなたは、私があなたのことを好きではないから、私と契約婚をしたいとおっしゃいました。だから、このことをずっと言えませんでした」
スティーブン王子は信じられないと言った表情になった。
私は小さな声で、三つ目の条件を言った。
『三つ、決してお互いの気を惹こうとかせず、互いの愛を求めないこと』
「あぁ、フランソワーズ!そうだったのか!」
王子はそう言いながら、私をさらに抱きしめて、頭を撫ででまたキスをした。
「僕たちは今日『恋愛婚』をしたんだな。幸せだ。こんな幸せなことはない」
王子の瞳から涙が溢れ、私も泣いていた。
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