辺境伯ブルク家ご令嬢

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 私も泣きたかったが、できないものはできない。彼を騙すような媚薬を作って渡すことは私にはできない。媚薬のレシピは知っている。私の力では完璧なものは作れなくても、少しの効力を込められたりはするだろう。だからこそ、私にはできない。 「ね……今日はご帰宅されてお休みになった方がよろしいですわ。夜も眠れないのでしょう?ぐっすり眠れるように寝る前にミルクを……「そんな気休めなんて聞きたくないっ!」」  ソフィー令嬢は私の手を振り払った。彼女はパッと立ち上がって後ろによろよろと後ずさった。 「あなた……あなた……あなたもしかして……っ!」  彼女は真っ赤な顔をして私を睨むように見た。 「あなたも王子のことを好きなのね!?「違いますっ!」」  私の否定の言葉にムキになりすぎた感があったのだろうか。女の勘は鋭い。  彼女は私をキッと睨んで静かに言った。冷たい高位貴族令嬢の声になっている。 「もう結構。あなたには失望しましたわ。失礼いたしますわ。突然押しかけてきて申し訳ありませんでした」
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