21人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
私も泣きたかったが、できないものはできない。彼を騙すような媚薬を作って渡すことは私にはできない。媚薬のレシピは知っている。私の力では完璧なものは作れなくても、少しの効力を込められたりはするだろう。だからこそ、私にはできない。
「ね……今日はご帰宅されてお休みになった方がよろしいですわ。夜も眠れないのでしょう?ぐっすり眠れるように寝る前にミルクを……「そんな気休めなんて聞きたくないっ!」」
ソフィー令嬢は私の手を振り払った。彼女はパッと立ち上がって後ろによろよろと後ずさった。
「あなた……あなた……あなたもしかして……っ!」
彼女は真っ赤な顔をして私を睨むように見た。
「あなたも王子のことを好きなのね!?「違いますっ!」」
私の否定の言葉にムキになりすぎた感があったのだろうか。女の勘は鋭い。
彼女は私をキッと睨んで静かに言った。冷たい高位貴族令嬢の声になっている。
「もう結構。あなたには失望しましたわ。失礼いたしますわ。突然押しかけてきて申し訳ありませんでした」
最初のコメントを投稿しよう!