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時計台の鐘が鳴った。そろそろ出勤しなければならない。ロバート・クリフトン卿が私を待ち合わせ場所で待っているだろう。今日の予定にはスティーブン王子の護衛は含まれていなかった。
しかし、私の運命はこの時思わぬ方向に舵を切ったのだ。最悪な出会いと言うべき、間の悪いタイミングで私たちはそばにいたことになる。
玄関の扉がノックされた。激しく轟くように。
私は窓からそっと外を見て飛び上がるほど驚いた。片想いの相手の王子が私の家の扉を激しく叩いていたのだ。
私が通りを見ると、王家の馬車と分からない馬車が停まっていた。スティーブン王子はお忍びのようだ。
私は走るようにして玄関に駆けつけて扉をさっと開けた。傾れ込むように王子が家の中に入ってきた。
「いかがされました?」
私はなんとか王子を抱き止めようとして、衝撃のあまりに床にそのまま押し倒された。
「薬を盛られた。解毒を頼む……」
真っ赤な顔の王子は苦しそうに喘ぎながら、私にそう囁いた。王子の顔が私の胸の辺りにあって、今度は私が真っ赤になった。必死に王子の体を押しのけてなんとか王子を仰向けにした。そして王子の体の下から這い出した。
「かしこまりました。解毒を試みます」
口の中でぶつぶつ呪文を唱えて、素早く王子の体に盛られた薬の解毒を試みようとした。
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