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見たところ命に関わるような致命的な毒薬ではなさそうだったが、真っ赤な顔をした王子は息も荒い。
「何の薬かわかりますでしょうか」
「媚薬……」
――えっ!?
「ブルク辺境伯のゾフィー令嬢から……ですか?」
一瞬の沈黙があったあと、スティーブン王子は苦しいそうな表情で答えた。
「違う。ジェノ侯爵家のエリーゼ令嬢だ。危ないと思って必死で逃げてきた。お茶のカップに盛られていた。君の家がこの辺りだと聞いておいて良かった。いきなりで申し訳ないが、すぐに解毒できるか?」
私にはそれほど力がない。でも、私は何としてでも解毒を試みなければならない。
「何かお腹に入れてください。盛られた媚薬の血中濃度を中和しましょう。私の力はそれほどありませんが、お食べになっている間に解毒を試みます」
私はキッチンの椅子に王子を座らせ、ちょうど自分用に用意していたスープと大麦粥、焼きたてのパンを出した。王子は赤らめた顔で私の顔をぼーっと見つめていたが、私がしつこく促すとゆっくりと食べ始めた。
粗末な食事で申し訳ないと思いつつ、私は必死に解毒のスキルを使った。いくつかのスキルを組み合わせて試みたが、王子は食べながら赤らめた顔で私を見つめて苦しげにしているのは変わらなかった。
「あの……少しは楽になりましたでしょうか?」
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