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「食べたら、少しマシになったと思う」
私はほっとした。第一聖女より私の力は低い。不甲斐ない自分に情けなさを感じたが、命に関わるような事態ではないとわかり、ほっともしていた。
「このパンは君が焼いたのか?」
「さようでございます」
王子はぼんやり私の顔を見つめていたが、「うまい」と言ってくれた。
私は真っ赤になった。ただパンを褒められただけなのに、だ。
――危ない。気をしっかり保たなければ、私の心が王子に見透かされてしまう。
「ありがとうございます」
私は職務上の業務連絡のような調子を心掛けて、淡々とお礼を言った。
「楽になったのであれば、速やかに戻りましょう。ここは私の家です。あなたのような方が長居して良い場所ではございません」
私はさっと立ち上がり、王子に外に出ようと促した。王子はチラッと微笑んだ。美しい顔を赤らめて少し恥ずかしそうにする仕草に私の心はキュンとした。
だが、必死で冷静さを装う。
「さあ、行きましょう」
私が再度促すと、王子はフラフラと立ち上がって私にしなだれかかった。
「キャっ」
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