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私はいきなり王子が寄りかかってきたのでふらついたが、必死で倒れないように足に力を込めて王子を支えた。王子の顔は赤らんでいて、潤んだ瞳でどこか悲しげに床の方に視線が落ちた。
私は彼を支えながら家の扉を閉めて、外から鍵をかけた。そのまま通りで待たせている馬車の所まで彼を支えて歩き、慌てて飛んできた御者と息を合わせて王子を馬車の座席に座らせた。
「別邸に頼む。このままでは王宮に戻れないから」
王子は御者に頼み、王子が私の手を離さないので私も馬車の中に座った。
ぐったりとした王子は私の肩にしなだれかかり、私はぶつぶつとずっと解毒のスキルを発動していた。
――だめだわ。どうしよう。私の力ではやはり完璧に解毒できないわ。最悪だ。
「陛下が僕に結婚しろと迫ったんだ。だから、妙齢の令嬢たちがこぞって私に会いにきたがるんだ。いろんな理由をつけて」
王子は少し悲しげな表情で私に言った。
「私の好きな人は別にいるというのに、彼女のことはもう忘れたかのように、吹っ切れたように振る舞う必要がある。でも情けないことに、まだダメなんだ」
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