契約婚 ※

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 私はいけないと自分に喝を入れた。つい、卑下する方向に考えがちだが、私は国から手当をもらえる国に認められた聖女なのだ。気をしっかり持って王子を無事に送り届けなければならない。  私情に流されてはダメだ。  大好きな人が私の肩に寄りかかっているその部分の熱が、どうしようもなく温かくてこのままずっと時が止まればいいのにとすら思えてきた。  夏のバラが鮮やかに別邸までの道のりを彩り、馬車の外を眺めると、美しい湖のようなお堀に囲まれた優美な別邸が姿を現していた。あらゆる人の胸を打つほど美しいと言われるニーズベリー城だ。   王子がぐったりと座っている馬車が別邸に着くと、慌ただしく門が開き、お堀の上の橋の石畳を馬車はがたことと音を立てて走った。このニーズベリー城に着くと、私はいつもあまりの広大さと美しさに見惚れてしまう。城の前で従者が迎えに飛び出してきた。私は王子を彼らに任せた。 「では、あとはよろしくお願いいたします」  私が素早く身を翻して去ろうとすると、「だめだ」と王子が私の腕を掴んだ。 「まだ解毒されていない。危険だ。引き続き解毒を試みて欲しい」  王子は真剣な眼差しで私に言った。  私の職業は聖女だ。確かに解毒が終わっていなければ、引き続き解毒を行う必要はある。 「かしこまりました」  私はそう告げて、従者に運ばれる王子の後について行った。 「一体何の毒を盛られたのでしょうか?」  侍女や従者に聞かれたたが、私は「お命には問題ない状況でございます」と答えるだけにとどめた。
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