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驚いて目を見開くこと二度目の国王陛下は、ポカンとした表情をしたのちに、膝を打って喜びの声を上げた。
「国をあげて急ごう。よくぞ決断してくれた。おめでとう、スティーブン」
国王陛下は優しい顔に目に涙を浮かべて、息子であらせられるスティーブン王子を抱きしめた。
スティーブン王子はなぜか晴れ晴れとした表情だ。
昨日まではフランソワーズ嬢のことなど、これっぽっちも眼中にないといった様子で、第一聖女だったヴィラ嬢のことを吹っ切れずに気持ちを痛めてらしたスティーブン王子の変わりように、私は心底驚いた。
しかも、お相手はフランソワーズ嬢だ。
私は複雑な思いで、陛下と王子のやりとりをおそばで眺めていたのであった。
――愛のない結婚はされないだろう。きっと今だけ失礼で痛む胸のうちを隠すため、それと言い寄る令嬢をかわすために、何か策を講じられたのであろう。
私はそう考えた。
だが?
物事は思わぬ方向に進み始めていたようだ。この時の私は、それをまだ理解していない。
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