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目を覚まさなかったら、私も母もおそらく死んでいたのだろう。
明け方近くに火は消えたが、家はとてもではないが住める状態ではなかった。
母は近所の修道院に荷車で運ばれて、修道院がベッドを用意してくれて寝かしてくれた。
――これからどうしよう。
私は焼けた家の前で座り込んでいた。
そんな私をじろっと見てフェリックス・ブルックは言った。
「そんな所に座り込んでいる暇はないだろう。母親を受け入れてくれた修道院に行って休むんだ。お前を快く思わない奴は他にも沢山いるだろうから、こんなもので済むと思うな。命が助かっただけありがたいと思え」
ブルックは必死で消火活動をしてくれた。あの困った時にただ一人だけお金を貸してくれたみたいに、彼はまた助けてくれた。
私は我に返ってブルックを見上げた。巨人のような彼の体躯が普段は憎いのに、今日はそうでもない。火がおさまったのは、彼を始めとして近所の人が消火を手伝ってくれたからだ。
私はうなずいて、「ありがとう」とお礼を言った。
「別邸にどうぞと王子がおっしゃっています」
ロバート・クリフトン卿は私の隣にそっとやってきて私に声をかけてくれた。
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